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資産運用の目標設定|ライフプランに合わせた投資額の考え方
① なぜ「商品選び」より先に目標なのか
投資の情報を調べ始めると、多くの人はいきなり「どの投資信託がいいか」「どの証券会社が有利か」という話にたどり着きます。もちろんどちらも大事なのですが、順番としては後ろの方にあるテーマです。
理由はシンプルで、目標が決まっていないと、その商品が自分に合っているかどうかを判断できないからです。たとえば「3年後の住宅頭金」と「30年後の老後資金」では、同じ人であっても、取れるリスクの大きさも、置いておく場所も変わります。前者で大きく値動きする商品を選んでしまうと、必要な時期にちょうど値下がりしている、という事態が起こり得ます。
- そのお金を、値動きのある商品に置いてよいのかどうか
- 毎月いくら積み立てるのが自分にとって無理のない額なのか
- 相場が下がったときに、続けるのか、やめるのか、あらかじめ決めておける
- 「まわりが儲かっている」という話に、判断を引きずられにくくなる
逆に言えば、目標が曖昧なまま始めた投資は、下落局面でやめる理由を見つけやすいとも言えます。「何のために持っているのか」が自分でも説明できないと、含み損が出たときに手放す方向へ気持ちが傾きやすいためです。
② 目標を3つの要素に分解する
「老後が不安」「子どもの教育費が心配」——出発点はそれで構いません。ただ、そのままだと行動に落とせないので、次の3つに分解していきます。
| 要素 | 決めること | 例 |
|---|---|---|
| ①目的 | 何のためのお金か | 教育費/住宅の頭金/老後の生活費/車の買い替え |
| ②時期 | いつ使う予定か(何年後か) | 3年後/15年後/30年後 |
| ③金額 | いくら必要か(概算でよい) | 300万円/1,000万円 |
ポイントは、金額は正確でなくてよいということです。30年後の生活費を1円単位で見積もることは誰にもできません。ここで必要なのは、桁がわかる程度の見積もりです。「だいたい何百万円の話なのか、何千万円の話なのか」がわかれば、毎月の積立額の目安は出せます。
また、目標はひとつに絞る必要もありません。「5年後に車、20年後に教育費、35年後に老後資金」というように、複数を並べて構いません。むしろ並べたほうが、時期の近いものと遠いものを分けて扱えるようになります。
③ お金を「使う時期」で3つに仕分ける
目的と時期を書き出したら、次は手元の資産と将来の入金を、使う時期で3つに仕分けます。これは家計の整理としてよく紹介されている考え方です。
1. すぐ使うお金・万一のためのお金
生活費、近く支払う予定のある費用、そして病気や失業などに備える生活防衛資金です。ここは値動きのある商品に置かない、というのが一般的な整理です。必要になるタイミングを選べないお金だからです。生活防衛資金の考え方は投資を始めるタイミングに正解はある?年代別の考え方で詳しく触れています。
2. 数年以内に使う予定があるお金
住宅の頭金、車の買い替え、数年後に控えた学費など、使う時期がほぼ決まっているお金です。値動きのある資産に置くと、必要な時期に値下がりしている可能性を避けられません。この層をどう扱うかは、目標設定でいちばん判断が分かれるところです。
3. 当面使う予定のないお金
10年、20年と先まで使う予定がないお金です。投資の対象として一般に想定されているのは、主にこの層です。時間があるぶん、途中の値動きを待つ余地があるという考え方になります。
- 「投資に回してよい金額」の上限が、感覚ではなく数字で見える
- 値下がりしても、当面使わないお金だと自分で確認できる
- 急な出費のたびに投資商品を売る、という状態を避けやすい
- 目標ごとに口座や商品を分けておくと、進捗が把握しやすい
④ 投資に回せる金額を家計から出す
ここでようやく「毎月いくら」の話になります。順番としては、手取り収入 −(生活費+定期的な支出)− 貯蓄しておきたい分の残りが、投資に回せる金額の上限です。
この計算をするときに見落とされやすいのが、毎月は発生しないけれど確実に来る支出です。
| 見落とされやすい支出 | 備考 |
|---|---|
| 税金・社会保険料 | 住民税、国民健康保険料など、給与天引きでない場合は特に |
| 年払いの保険料 | まとまった額が一度に出る |
| 車関連 | 車検、自動車税、任意保険、タイヤ交換など |
| 家電・住宅の修繕 | 時期は読めないが、いずれ必ず発生する |
| 帰省・冠婚葬祭・旅行 | 年に数回、まとまって出ていく |
これらを月割りにして生活費に含めておかないと、「毎月は黒字なのに、年間で見ると貯まっていない」という状態になりがちです。年間ベースで見て残る金額を12で割るほうが、実態に近い数字になります。
⑤ 目標金額から積立額を逆算する
目標金額と期間が決まっていれば、元本ベースでの必要積立額はすぐ計算できます。運用による増減を一切考えない、いちばん保守的な見方です。
| 目標金額 | 10年で貯める | 20年で貯める | 30年で貯める |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 月25,000円 | 月12,500円 | 月約8,300円 |
| 500万円 | 月約41,700円 | 月約20,800円 | 月約13,900円 |
| 1,000万円 | 月約83,300円 | 月約41,700円 | 月約27,800円 |
| 2,000万円 | 月約166,700円 | 月約83,300円 | 月約55,600円 |
※目標金額 ÷ 月数で計算した、運用損益を含まない金額です。
この表を見て「30年あれば、月3万円弱で1,000万円か」と感じるか、「10年だと厳しい」と感じるかで、次にやるべきことが変わります。金額が現実的でないなら、選べる調整は基本的に3つしかありません。
- ①期間を延ばす:使う時期を後ろにずらせないか検討する
- ②目標金額を下げる:本当にその金額が必要か、内訳を見直す
- ③入金力を上げる:支出を見直す、収入を増やす
ここで「④高いリターンを狙う」を選択肢に入れないことが、実務的にはとても大切だと言われています。リターンは自分で決められる変数ではないためです。期待するリターンを上げるという発想は、実際にはリスク(値動きの幅)を上げることを意味します。目標に届かせるためにリスクを上げると、届かないどころか元本を大きく減らす可能性も同時に高まります。
もちろん、運用によって資産が増える可能性はあります。ただし、それはあくまで不確実なものです。計画は元本ベースで立てておき、運用収益は「あればありがたいもの」として扱うほうが、計画が破綻しにくくなります。時間をかけて積み立てる方法そのものについては積立投資とドルコスト平均法|初心者にやさしい投資の始め方をご覧ください。
⑥ リスク許容度は「気分」より「事情」で決まる
リスク許容度とは、ごく簡単に言えば「どれくらいの値下がりまでなら、生活にも気持ちにも支障が出ないか」です。これを診断するチェックリストは各社が用意していますが、根っこにあるのは次のような客観的な条件です。
| 条件 | 一般に言われる傾向 |
|---|---|
| 使うまでの期間 | 長いほど、途中の値動きを待つ余地がある |
| 収入の安定性 | 安定しているほど、下落局面で取り崩さずに済みやすい |
| 金融資産に占める割合 | 資産全体に対して投資の割合が小さいほど、影響は限定的 |
| 生活防衛資金の有無 | 確保されているほど、急な出費で売却する必要が減る |
| 本人の性格 | 値動きが気になって眠れない状態は、続けにくい |
最後の項目だけが主観的ですが、これも軽視できません。理屈のうえで耐えられる下落と、実際に耐えられる下落は違うからです。相場が良いときに答えるアンケートでは、多くの人が自分のリスク許容度を高めに見積もりがちだ、という指摘もあります。
具体的な資産の組み合わせ方については分散投資・ポートフォリオの考え方|初心者向け基本で整理しています。
⑦ 目標は決めて終わりではない
ライフプランは変わります。転職、結婚、出産、住宅の購入、家族の介護——どれも積立額や必要資金に影響します。目標は定期的に点検する前提で置いておくのが現実的です。
- 年に1回など、時期を決めた定期点検(誕生日や年始など、忘れない日に)
- 収入が大きく変わったとき(転職・昇給・独立・休職など)
- 家族構成が変わったとき
- 大きな支出の予定が決まったとき(住宅購入、進学など)
- 制度が変わったとき(税制や非課税制度の改正など)
ここで注意したいのは、「相場が下がったから」は、目標を見直す理由としては弱いということです。値動きに合わせて計画を変え続けると、結局は高いときに買って安いときに売るという行動になりかねません。見直すのは、相場ではなく自分の事情が変わったとき——という切り分けが、多くの解説で共通しています。
なお、目標が「老後資金」で、引き出す時期がかなり先に限られてよいのであれば、iDeCoのように引き出し制限がある代わりに税制上の優遇がある制度も選択肢に入ります。違いはiDeCo(個人型確定拠出年金)とは?NISAとの違いと使い分けで比較しています。非課税で投資できる枠の使い分けについては新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の違いもあわせてご覧ください。
目的・時期・金額が整理できたら、次はそのお金をどこに置くかです。証券口座の開設自体は無料で、開設したからといってすぐに投資を始める必要はありません。
証券会社の選び方を見る →投資を始めるには、まず証券口座が必要です。一例として、初心者向けのサポートに力を入れているDMM株をご紹介します。もちろん、ほかの証券会社が合う方もいます。ご自身に合うところを選んでください。
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- 商品選びより先に、「何のために・いつまでに・いくら」を決めると判断がぶれにくい
- 金額は正確でなくてよい。桁がわかる程度の概算で十分
- お金は「すぐ使う/数年内に使う/当面使わない」の3つに仕分ける
- 投資に回せる額は、年に数回の大きな支出まで含めた年間ベースで計算する
- 目標金額からの逆算は、まず運用損益を含まない元本ベースで行う
- 足りないときの調整は「期間・金額・入金力」。リターンを上げる発想はリスクを上げる発想と同じ
- リスク許容度は、期間・収入の安定性・資産に占める割合といった客観的な事情から考える
- 見直すのは相場が動いたときではなく、自分の事情が変わったとき
※この記事は投資に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・サービスの勧誘や、個別の投資助言・ファイナンシャルプランニングを行うものではありません。記載の計算例は仕組みを説明するための単純化した試算で、将来の運用成果を示すものではありません。制度や条件は変更される場合がありますので、最新の情報は金融庁・国税庁などの公的機関や各金融機関の公式情報をご確認ください。投資はご自身の判断と責任で行ってください。投資には元本割れのリスクがあります。