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家族が亡くなったときの証券口座の手続き|株・投資信託・NISA口座はどうなる? 相続の基本
① 手続きの一般的な流れと、必要になりやすい書類
証券会社が公開している相続手続きの案内(複数社)を確認すると、おおまかな流れは次のようにまとめられます。細かい名称や順番は会社によって違いますので、「このような流れが一般的」というイメージとして読んでください。
| 段階 | 内容(一般的な例) |
|---|---|
| ① 連絡 | 口座のある証券会社に、口座の名義人が亡くなったことを連絡する。相続人の代表者が窓口になる会社がある |
| ② 書類の案内 | 会社から、手続きの案内と所定の書類が届く。保有している資産の一覧が示される場合もある |
| ③ 書類の提出 | 戸籍謄本(または法定相続情報一覧図)、印鑑登録証明書、遺言書や遺産分割協議書、会社所定の依頼書などを提出する |
| ④ 移管または売却 | 株や投資信託は、相続人名義の口座に移す(移管)。会社によっては、投資信託を解約して代金を移す方法もある |
| ⑤ 完了 | 手続きが終わると、完了の通知が届く |
必要書類は、遺言書や遺産分割協議書の有無、相続人の人数などで変わります。公開されている案内では、戸籍謄本などは「発行から6か月以内」、印鑑登録証明書は「発行から3か月以内」など、書類に有効期間の目安がある会社もあります。また、法務局が発行する「法定相続情報一覧図」を提出すると、戸籍謄本の提出を省略できる会社もあるとされています。書類が期限切れにならないよう、最初に会社へ確認するのが無難です。
かかる期間も会社によって違います。ある会社の案内では、書類に不備がない簡易的な手続きで死亡の連絡から1か月ほど、通常の手続きで2〜3か月ほどが目安とされていました。郵送の状況や書類の不備、資産の内容によっては、さらに時間がかかる場合があります。
- 確認した公開情報の範囲では、死亡の連絡後に口座での取引がどう扱われるかは、会社の案内で異なり、一律には読み取れませんでした
- ある会社の案内では、「原則として、亡くなった方の口座で有価証券を売却することはできず、相続人の口座に移したあとで売却できる」とされています
- 取引の可否や、配当金などが入る口座の扱いは、口座のある証券会社の案内に従ってください
② 株・投資信託はどうなる?|移管と売却の考え方
基本は「相続人の口座へ移す」
公開されている複数の証券会社の案内では、株式や投資信託は相続人名義の口座に移す(移管する)のが基本とされています。移し先の口座を相続人が持っていない場合は、先に口座を開設する必要があるという案内もあります。口座の種類(特定口座か一般口座か)の違いは、特定口座と一般口座の違いを参考にしてください。
預貯金のように、そのまま現金で払い戻される手続きではない点が、証券口座の特徴です。現金にしたい場合は、移管のあとに、相続人の口座で売却や解約をする、という順番になるのが一般的とされています。ただし、投資信託を会社が解約して代金を移す方法を用意している会社もあるなど、扱いは会社によって違います。
移管できないものがある場合も
ある会社の案内では、信用取引の建玉やFXなどの取引は相続人の口座へ移管できず、会社が決済するとされていました。投資信託の移管に1銘柄ごとの手数料がかかる会社もあります。具体的な内容は、口座のある会社の案内で確認してください。
相続人が複数いるとき
相続人が複数いる場合、会社の案内では次のような扱いが見られます。
- 相続人の中から代表者を決め、代表者が連絡や書類のやり取りの窓口になる
- 資産は、原則として代表者の口座へ移される。法定相続人全員が押印した遺産分割協議書を出せば、各相続人の口座へ移す方法を用意している会社もある(内容によっては受け付けられない場合がある)
- 相続放棄をした人がいる場合は、家庭裁判所が発行する書類の提出が求められる会社がある
誰が相続人になるのか、法定相続分はどうなるのかは、民法で定められています。国税庁の「相続人の範囲と法定相続分」では、配偶者は常に相続人となり、そのほかは子、親などの直系尊属、兄弟姉妹の順で相続人になると説明されています。また、法定相続分は遺産分割の合意ができなかったときの目安であり、その割合で分けなければならないわけではないとも書かれています。実際の分け方は、相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)で決めることになります。
③ NISA口座はどうなる?|非課税の扱いと届出
NISA口座については、日本証券業協会の「2024年以降のNISAに関するQ&A」(2026年9月版)と、国税庁のNISAに関するQ&Aで、次のように説明されています。
- 届出が必要:口座を開設していた人が亡くなったとき、相続人は、亡くなったことを知った日以後、遅滞なく「非課税口座開設者死亡届出書」を、NISA口座のある証券会社の営業所に提出する。金融機関の変更などでNISA口座が複数の会社にある場合は、すべての会社に提出する
- 口座から払い出される:国税庁のQ&Aでは、NISA口座を開設していた人が亡くなった場合、NISA口座に受け入れられていた上場株式等はNISA口座から払い出される、と説明されている
- 相続人のNISA口座には入れられない:NISA口座に受け入れられるのは、新たに購入した上場株式等などに限られるため、相続した株式等は、相続人の特定口座か一般口座に受け入れることになる
- 取得日と取得価額:相続人の口座に受け入れる株式等の取得日は相続が発生した日、取得価額は相続が発生した日の時価とされている(投資信託は基準価額、ETFは取引所の最終価格などの考え方が示されている)
- 配当金の注意点:亡くなった日から届出書を提出するまでの間に、そのNISA口座で支払われた配当金等があると、さかのぼって課税される
つまり、亡くなった方のNISA口座で続いていた非課税の扱いは、相続人にそのまま引き継がれるわけではありません。相続後の売却益や配当の税金は、相続人の口座(特定口座・一般口座)の扱いになります。特定口座に受け入れる場合は、相続の対象となった同じ銘柄をすべてその口座に移す必要があるなどの条件があり、「相続上場株式等移管依頼書」の提出が求められるとされています。また、被相続人のNISA口座がある会社と、相続人の特定口座がある会社が同じ場合に移管できる、とも書かれています。NISAの制度そのものは新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の違いやNISAで売却したら枠は復活する?をご覧ください。
④ 相続税の基本|申告期限と上場株式の評価
申告が必要なのは、財産の合計が基礎控除を超える場合
国税庁のタックスアンサー(No.4205「相続税の申告と納税」、2026年4月1日現在の法令等)によると、相続税の申告と納税が必要なのは、相続などで取得した財産の価額の合計額(債務などを控除したもの)が遺産に係る基礎控除額を超える場合です。基礎控除額の範囲内であれば、申告も納税も必要ありません。基礎控除額は、No.4152「相続税の計算」で3,000万円+600万円×法定相続人の数と示されています。相続税がかかる財産には、現金や預貯金のほか、有価証券(株式など)も含まれるとされています(No.4105)。
申告期限は10か月以内
相続税の申告の期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です。たとえば1月6日に亡くなった場合は、その年の11月6日が期限になる、という例が国税庁に示されています。期限が土曜日、日曜日、祝日などにあたるときは、その翌日が期限とみなされます。
また、No.4208によると、遺産の分け方が決まっていなくても、分割がまとまらないことを理由に申告期限が延びることはありません。その場合は、民法の相続分などに従って財産を取得したものとして計算し、申告と納税をすることになります。証券会社での手続きが長引いても、税金の期限とは別に進みます。
上場株式は「死亡の日の最終価格」が基本
国税庁のNo.4632「上場株式の評価」によると、相続税の計算で、上場株式は、上場している金融商品取引所が公表する課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日)の最終価格で評価します。ただし、その最終価格が、課税時期の属する月、前月、前々月のそれぞれの毎日の最終価格の月平均額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額で評価する、とされています。課税時期に最終価格がない場合などは、一定の修正をすることになっています。
ここで注意したいのは、相続税の評価額(上の考え方)と、NISA口座から移したときの取得価額(相続が発生した日の時価)は、別の目的の数字だということです。どちらがどの場面で必要になるかは、税務署や税理士にご確認ください。なお、投資信託などの評価方法は、この記事では原文で確認できた範囲を超えるため、触れていません。税額の試算も行いません。
⑤ 相続した株を売ったとき|取得費加算の特例
相続した株を売って利益が出たときの税金(譲渡所得)については、一定の場合に取得費に相続税額の一部を加算できる特例があります。国税庁のNo.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」では、適用を受けるための要件として、次の3つが示されています。
- 相続や遺贈により財産を取得した人であること
- その財産を取得した人に、相続税が課税されていること
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
この特例は、譲渡所得にだけ適用されるもので、適用を受けるには確定申告が必要です。取得費に加算できる金額は、一定の算式で計算し、売却した財産ごとに計算するとされています。相続税が課税されていない場合は要件を満たしません。計算や申告の可否は、税務署や税理士にご確認ください。
売却益の税金の基本は投資にかかる税金の基本で、確定申告の考え方は特定口座と一般口座の違いで扱っています。
⑥ 口座のある証券会社が分からないときの調べ方
「株を持っていたはずだが、どこの証券会社か分からない」という場合には、証券保管振替機構(ほふり)の「登録済加入者情報の開示請求」という手続きがあります。ほふりの案内(2026年10月版)で、確認できた内容は次のとおりです。
- 相続人(法定相続人)などが請求でき、亡くなった方の振替株式等の口座が開設されている証券会社、信託銀行等の一覧を、有料で確認できる
- 請求は郵送のみで、窓口や電話での受け付けや回答は行っていない
- 費用は1件7,700円(税込)。法務局発行の法定相続情報一覧図のコピーを提出した場合は6,050円(税込)。該当する口座がなかった場合も費用はかかる
- 書類に不備がない場合でも、請求の受け付けから結果の送付まで2か月ほどかかる(混み合う時期は、さらに時間がかかる場合がある)
- 確認できないのは、銘柄名、取引履歴、保有残高。これらは、開示結果をもとに各証券会社へ問い合わせる
- 外国株式、国債、社債などは、この手続きでは口座の開設先が分からない(別の方法で確認が必要)
様式や必要書類は、ほふりのホームページで確認できます。受け付け後はキャンセルができないため、証券会社に心当たりがあるときは、先にその会社へ問い合わせてから請求するよう案内されています。また、開示結果の会社へ連絡しても「口座がない」と言われる場合には、全店で調べられる窓口に「加入者口座コード」を伝える、といった案内もあります。
⑦ 相談先と、始める前のチェックリスト
こんなときは、ここに相談
| 知りたいこと | 相談先の例 |
|---|---|
| 口座の手続き、必要書類、移管の方法、手数料 | 口座のある証券会社 |
| 相続税の申告の要否、株の評価、売却時の税金 | 税務署、税理士 |
| 相続人の確定、遺産分割協議書、書類づくり | 司法書士、弁護士などの専門家 |
| 口座の開設先の調査 | 証券保管振替機構(ほふり) |
始める前のチェックリスト
- 亡くなった方が口座を持っていた証券会社はどこか
- 相続人は誰か、遺言書はあるか、代表者を誰にするか
- 相続人の口座は開設済みか(特定口座か一般口座か)
- NISA口座がある場合、「非課税口座開設者死亡届出書」の提出をいつ行うか(遅滞なく)
- 相続税の申告期限(死亡を知った日の翌日から10か月以内)はいつか
- 売却を考えている場合、取得費加算の特例の期限(相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日まで)
- 書類の有効期間(発行から何か月以内か)
証券会社の選び方や、これから投資を始める準備については、証券会社の選び方や生活防衛資金の考え方で整理しています。また、相続した株を持ち続けるのか売るのかは、相続人それぞれの状況によって変わります。元本割れの可能性など、投資のリスクを踏まえたうえで、最終的な判断はご自身で行ってください。
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- 証券口座の相続は、口座のある証券会社に連絡し、案内に従って書類を出し、株や投資信託を相続人の口座へ移す(移管)のが一般的な流れ。必要書類や期間は会社によって違う
- 現金にしたい場合は、移管のあとに相続人の口座で売却や解約をするのが一般的とされる。信用取引などは移管できない場合もある
- NISA口座は、相続人が「非課税口座開設者死亡届出書」を遅滞なく提出する。相続した株式等は相続人のNISA口座には入れられず、特定口座か一般口座へ。取得日は相続が発生した日、取得価額はその日の時価とされる
- 相続税の申告は、死亡を知った日の翌日から10か月以内。遺産の分割がまとまらなくても、期限は延びない。財産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかが目安
- 相続した株を売るときは、一定の要件を満たすと、取得費に相続税額の一部を加算できる特例がある。確定申告が必要
- 口座の開設先が分からないときは、ほふりの開示請求(郵送のみ・有料・2か月ほど)がある。個別の判断は、証券会社、税務署、税理士、司法書士などに相談し、最終判断はご自身で
- 日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(2026年9月版)(2026年10月確認)
- 国税庁「新NISAの基準額提供事項の提供に係るQ&A」(令和8年7月改訂)(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.4208「相続財産が分割されていないときの申告」(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.4105「相続税がかかる財産」(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.4132「相続人の範囲と法定相続分」(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.4632「上場株式の評価」(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(2026年10月確認)
- 証券保管振替機構(ほふり)「ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合」(2026年10月確認)
- 証券保管振替機構「【相続人(又は相続人の代理人)用】登録済加入者情報の開示請求に係るお手続について」(2026年10月版)(2026年10月確認)
- 証券会社の相続手続きの案内の例(松井証券)(2026年10月確認)
- 証券会社の相続手続きの案内の例(kabu.com)(2026年10月確認)
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や個別の投資助言・税務相談・法律相談を行うものではありません。制度の内容は2026年10月時点で確認できた情報にもとづいており、変わる場合があります。証券会社の手続きや必要書類は会社によって異なります。個別の相続については、証券会社、税務署、税理士、司法書士などにご確認のうえ、最終判断はご自身で行ってください。