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投資信託の償還・繰上償還とは|信託期間の種類と、運用が終わるときに知っておきたいこと
① 償還とは|運用が終わって、お金が戻ってくること
投資信託は、多くの投資家から集めたお金を、運用会社(法律上の名称は「投資信託委託会社」)がまとめて株式や債券などで運用する仕組みです。この運用が終わるときは、通常、組み入れていた資産を売って現金にし、投資家(法律上の名称は「受益者」)に返します。この一連の流れを、この記事では償還と呼びます。
運用が終わるきっかけには、大きく2つあります。
- 信託期間が終わる(期間を定めたファンドで、その日が来た場合)
- 信託期間の途中で終わる(これが繰上償還です)
法律の面から見ると、投資信託及び投資法人に関する法律(第4条第2項)では、投資信託の約款(運用のルールを定めた文書)に、「信託の元本の償還及び収益の分配に関する事項」と「信託契約期間、その延長及び信託契約期間中の解約に関する事項」を書くことが定められています。つまり、いつ、どんな条件で運用が終わるのかは、ファンドごとに約款で決められているということです。条文では運用会社が信託契約を終わらせることも「解約」と呼びますが、この記事では、投資家が自分で売る「換金」(解約)と区別するため、運用の終了を「償還」と書きます。自分で売るときの流れは、投資信託の注文から買付・受渡までの流れで解説しています。
② 信託期間の種類|「無期限」と「期間を定めたもの」
資産運用業協会(旧・投資信託協会)のQ&Aでは、投資信託は約款にもとづいて信託期間(運用期間)が定められているとされ、中には期間を設けていない「無期限」もあるという説明があります。目論見書(ファンドの説明書)では「信託期間」の欄で確認できます(金融庁のNISA資料でも、目論見書の見方の一つとして紹介されています)。記載の書き方はファンドによって違います。
| 種類 | 考え方 | 確認するところ |
|---|---|---|
| 期間を定めたもの | 決められた日(または年数)が来ると、信託期間が終わる。延長が定められている場合もある | 目論見書の「信託期間」「お申込みメモ」、約款 |
| 無期限 | 終わりの日を決めていない。ただし、後述の繰上償還の条件に当てはまれば、運用が終わる場合がある | 目論見書の「信託期間」「繰上償還」に関する記載 |
ポイントは、「無期限」は終わりの日を決めていないという意味であって、運用がずっと続くことを約束するものではないという点です。また、前の章で触れたとおり、信託期間の「延長」も約款に定める事項とされているため、期間を定めたファンドでも、期間が来る前に延長されるかどうかは、運用会社からのお知らせで確認することになります。
- 金融庁の資料(2024年6月版)では、つみたて投資枠の対象商品の要件の一つに、信託契約期間が「無期限又は20年以上」であることが挙げられています
- 成長投資枠では、信託期間20年未満の投資信託は対象から除かれるとされています
- NISAの枠の仕組みは新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の違いで解説しています
③ 繰上償還とは|信託期間の途中で運用が終わる場合
資産運用業協会のQ&Aでは、繰上償還を「信託約款で定められた条件を満たした場合、信託期間の途中で運用会社が信託財産の運用を取りやめ、受益者に前倒しで返還すること」という趣旨で説明しています。代表的なケースとして、次の3つが挙げられています。
- 残存口数が一定規模を下回った場合
- 純資産総額が減少し、継続的な運用が難しくなった場合
- 信託の終了が受益者にとって有利と認められた場合
また、法令の細則(投資信託及び投資法人に関する法律施行規則、第43条)には、約款にあらかじめ「純資産総額が、運用方針に従って継続的に運用するために必要な金額として運用会社が定める一定の金額を下回る状態が一定の期間続く場合には、運用会社が解約を行うことができる」といった定めがあるケースが書かれています。つまり、繰上償還の条件は、約款(と、その要点をまとめた目論見書)にあらかじめ書かれているのが基本です。
どのような場合に繰上償還になるのかは、ファンドごとに異なります。純資産総額(ファンドの資産の合計額)や口数の見方は、投資信託の選び方|信託報酬・純資産総額の見方にまとめています。この記事では、繰上償還になりやすいファンドの見分け方や、特定のファンドの話はしません。
④ 繰上償還の手続きと、受益者への通知
運用会社は、事前に国へ届け出る
投資信託及び投資法人に関する法律(第19条)では、運用会社が投資信託契約を解約しようとするときは、あらかじめ、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならないと定められています。届出書には、解約の理由や、解約の効力が生じる日などを書くことが施行規則(第41条)に定められています。
書面による決議が行われる場合
同法第20条は、解約のときにも、約款の重大な変更などと同じ「書面による決議」の手続き(第17条)を使うことを定めています。条文で確認できる主な内容は次のとおりです。
- 運用会社は、決議の日の2週間前までに、知れている受益者へ書面で通知する(受益者の承諾があれば電磁的方法でも可)
- 受益者は、持っている受益権の口数に応じて議決権を持つ
- 決議は、議決権を行使できる受益者の議決権の3分の2以上の賛成で成立する
- 約款に定めがあれば、議決権を行使しなかった受益者は賛成とみなす、という扱いにすることもできる(その場合は通知にその旨を記載する)
書面による決議が不要とされる場合
一方、法第20条第2項と施行規則第43条では、書面による決議が不要とされる場合も定められています(2026年10月時点のe-Gov法令検索の条文)。たとえば次のような場合です。
- 投資信託財産の状態に照らして、真にやむを得ない事情があり、決議の手続きを行うことが困難な場合
- 一定の条件を満たしたら解約を行うことがあらかじめ約款に定められていて、その条件を満たして行う場合
- 約款に、純資産総額が一定金額を下回る状態が一定期間続いたら運用会社が解約できること、受益者の保護のために必要な措置をとること、解約の6か月前までに受益者へ通知することなどが定められている場合
資産運用業協会のQ&Aにも、繰上償還の条件が約款に明確に書かれている場合は、受益者の賛否にかかわらず償還できる、という趣旨の説明があります。また、運用会社が公告を行うか、すべての受益者に書面を交付するのが一般的で、受益者には異議を申し立てる期間が与えられるともされています。手続きの形はファンドや理由によって違うため、届いたお知らせに書かれている日付と手続きの内容を、そのつど確認することが大切です。
お知らせは販売会社を通じて郵送や電子交付で届く場合があります。メールの設定や、取引先のマイページのお知らせを見落とさないようにしておくと安心です。
⑤ 償還のときに受け取るお金と、税金の基本
受け取るお金は「償還金」
償還のときに受け取るお金は、一般に償還金と呼ばれます。償還金の計算方法(どの日の基準価額をもとにするか、いつ支払うか)は、ファンドの約款や、運用会社のお知らせに書かれています。証券会社などの解説では、償還日の基準価額に保有口数をかけて計算する例が紹介されていますが、公的機関の資料では計算方法の詳細までは確認できませんでしたので、実際の計算方法と支払日は、お手元のお知らせで確認してください。
償還金は、買ったときの金額より増えることも、減ることもあります。投資信託は元本が保証された商品ではなく、償還金が買付額を下回る(元本割れ)可能性があります。繰上償還の場合は、戻ってくる時期を自分で選べない点も、あらかじめ知っておきたいところです。
税金の基本(公募の株式投資信託の場合)
資産運用業協会のQ&Aでは、投資信託の利益として、収益分配金、解約差益・売却益、そして償還によって得られた利益(償還差益)の3種類が挙げられています。2026年10月時点の案内の要点を表にまとめます。
| 項目 | 公募株式投資信託の場合の扱い(資産運用業協会の説明) |
|---|---|
| 償還差益 | 「上場株式等の譲渡所得等」として課税。税率は20.315%(所得税15.315%+住民税5%) |
| 普通分配金 | 配当所得として課税。現金で受け取っても再投資しても課税される |
| 元本払戻金(特別分配金) | 非課税。違いの詳細は投資信託の分配金とは? |
| 特定口座(源泉徴収あり) | 販売会社が税金を計算して源泉徴収するため、原則として確定申告は不要 |
| 損失が出た場合 | 申告分離課税を選ぶと、ほかの上場株式等の利益などと損益通算でき、引ききれない損失は翌年から最大3年間繰り越せる(繰越控除を使うには確定申告が必要) |
NISA口座で保有している場合、運用で得た利益には税金がかかりません(金融庁のNISA資料)。ただし、課税される口座かどうか、公募か私募か、株式投資信託か公社債投資信託かなどで扱いが違います。お手元のファンドの償還時の税金は、目論見書の「手続・手数料等」にある税金の説明で確認できると金融庁の資料でも紹介されています(購入時・分配金・償還時の税金を確認できるとされています)。個別の税額や確定申告の要否は、販売会社や税務署に確認してください。国税庁のタックスアンサーにも、一般株式等に当たる投資信託の終了時の課税を説明したページ(番号1537)があります。税金全般の基本は投資にかかる税金の基本をご覧ください。
⑥ 償還が近いときの運用と、NISA口座の場合
償還が近づくと、運用が通常と変わる場合がある
繰上償還が決まると、償還に向けて保有している資産を売って現金にする作業が進みます。運用会社のお知らせには、「償還準備のために資産を売却するため、償還までの間は運用の基本方針どおりの運用ができなくなる可能性がある」「基準価額が投資対象の値動きを反映しにくくなる」といった趣旨の注意書きが載る例があります。ただし、これは運用会社のお知らせの例であり、公的機関の資料で一般的なルールとして確認できたわけではありません。実際にどうなるかは、ファンドごとに届くお知らせ(繰上償還決定のお知らせ、運用報告書など)で確認してください。
NISA口座で償還された場合の「枠」
NISA口座で保有している投資信託が償還された場合、非課税の枠がどうなるのかは気になる点です。金融庁のNISAに関するよくある質問では、NISA口座内の商品を売却した場合には、その商品の簿価分の非課税枠を翌年以降に再利用できると説明されています。一方で、償還のときの枠の扱いについては、金融庁のよくある質問のページでは記載を確認できませんでした。そのため、この記事では「枠が復活する」「しない」とは書きません。償還後に再投資を考える場合は、取引先の販売会社に、償還の場合の枠の扱いを確認してください。枠の復活の基本はNISAで売却したら枠は復活する?で整理しています。
⑦ 確認の方法と、償還金の使い道
どこで確認するか
- 目論見書:「信託期間」の欄と、繰上償還の条件(お申込みメモなどに記載されることが多い)。個別のファンドの目論見書で確認できます
- 運用報告書:決算期ごとに作成され、交付運用報告書(重要事項をまとめたもの)が受益者に交付されます。全体版は運用会社のホームページなどで閲覧でき、請求すれば交付されるとされています(資産運用業協会)
- 販売会社・運用会社からのお知らせ:繰上償還や信託期間の延長は、ここで知ることが多い情報です。郵送・メール・マイページの通知を見落とさないようにしましょう
- 投信総合検索ライブラリー(資産運用業協会が運営):ファンドの検索や、追加型公募投信の交付目論見書PDFの閲覧ができます。募集が終わったものは掲載されていない場合があるとされています
償還金の使い道は、自分で決める
償還金が口座に入ったあと、そのお金をどうするかは、ご自身で決めることになります。たとえば、生活費や目的のお金として使う、現金のまま置いておく、別の投資に回す、などの選択肢が考えられます。どれがよいかは、お金を使う時期、投資の目的、値動きへの許容度、生活防衛資金(いざというときの現金)の確保などによって人それぞれで、この記事では特定の商品や選び方をすすめることはしません。
別の投資信託を検討する場合の見方は、投資信託の選び方、投資信託とETFの違い、インデックス投資とアクティブ投資の違いが参考になります。言葉が分からないときは株式投資の基本用語集もご利用ください。償還金を使う予定がないか、急な出費に備えた現金が足りているかを生活防衛資金の考え方で見直しておくのも一つの方法です。
- 償還(または繰上償還)の予定日と、書面決議・異議申立ての期限はいつか
- 償還金はいつ、どの口座に入るのか
- 課税口座かNISA口座か。税金の扱いと、確定申告が必要かどうか
- 償還までの間、売却(換金)や積立はできるのか
- 償還金をどう使うか。必要な時期はいつか
この記事は投資信託が中心ですが、株式投資のために証券会社の口座を検討している方もいると思います。広告主の紹介によると、DMM株は初心者向けのサポートに力を入れている証券会社とのことです。取り扱いの商品(投資信託の取り扱いの有無を含みます)や口座の種類、手数料など、サービスの内容や利用条件は、公式サイトでご確認ください。ほかの金融機関が合う方もいますので、ご自身で比べて選んでください。
初心者も安心!サポート充実の【DMM株】 →📌 まとめ
- 償還は、投資信託の運用が終わって、組み入れていた資産が現金になり、投資家にお金が戻ること。信託期間の途中で終わる場合を繰上償還という
- 信託期間には、期間を定めたものと「無期限」がある。無期限は終わりの日を決めていないという意味で、運用が続くことを約束するものではない。目論見書の「信託期間」の欄で確認できる
- 繰上償還の条件は約款(目論見書)に書かれている。資産運用業協会は、残存口数や純資産総額が一定規模を下回った場合などを代表的なケースとして挙げている
- 運用会社は解約の前に国へ届け出る。書面による決議では、決議の日の2週間前までの通知、3分の2以上の賛成が条文で定められている。約款の定めがある一定の場合は、書面による決議が不要とされている
- 公募株式投資信託の償還差益は、資産運用業協会の説明では「上場株式等の譲渡所得等」として扱われ、税率は20.315%。NISA口座では運用益が非課税。償還金は買付額を下回る可能性もある
- NISA口座で償還されたときの枠の扱いは、公的資料で確認できなかったため、販売会社に確認する。償還金の使い道は自分で決める。最終判断はご自身で
- e-Gov法令検索 投資信託及び投資法人に関する法律(第4条 約款の記載事項、第17条 書面による決議、第19条 解約の届出、第20条 解約等)(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索 投資信託及び投資法人に関する法律施行規則(第41条 解約の届出、第43条 書面による決議が不要な場合等)(同上)
- 資産運用業協会「投資信託Q&A100選 分配金・換金/償還の知識」(繰上償還・信託期間)(同上)
- 資産運用業協会「投資信託Q&A100選 税金・手数料の知識」(償還差益・分配金・特定口座・損益通算)(同上)
- 資産運用業協会「運用報告書」(同上)
- 投信総合検索ライブラリー(資産運用業協会)(同上)
- 金融庁「NISAを利用する皆さまへ」(2024年6月版。信託期間の要件、目論見書の見方、分配金の説明)(同上)
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト「よくある質問」(売却時の非課税枠の再利用)(同上)
- 国税庁 タックスアンサー 番号1537「一般株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合-投資信託等の終了等の場合-」(同上)
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や個別の投資助言・税務相談を行うものではありません。制度の内容は2026年10月時点で確認できた情報にもとづいており、変わる場合があります。償還の条件や手続き、税金の扱いはファンドや口座の種類によって異なります。個別のファンドの内容は目論見書や運用会社・販売会社の案内でご確認のうえ、最終判断はご自身で行ってください。